LinkStation で E04 Can’t Load Krnl! などが発生した後に、何度か再起動を繰り返すと、EM モードと呼ばれる状態になることがあります。この時に、LinkStation の製造・販売元であるBuffalo の一部のドキュメントには、ファームウェアアップデートをすると復旧する場合があると書かれています。
しかしながら、本当にこの操作を行って大丈夫なのか不安に思うかもしれません。本稿では、LinkStation がEMモードになった時にファームウェアアップデートを試すべきかについて論じます。
EMモードとはなんなのか
念のためEMモードとは何なのかをもう一度確認しておきます。
たとえば、 LinkStation名の一部に”EM”と表示されてアクセスできません – アンサー詳細 | BUFFALO バッファロー には、以下のように書かれています:
NAS Navigator2に表示されるLinkStation名の一部に”EM”が含まれて製品にアクセスできない場合、製品のファームウェアが破損して、製品が”エマージェンシーモード”の状態になっています。
※NAS Navigator2で検索したときにスタンバイと表示される場合があります。
“EM”、”エマージェンシーモード”、“スタンバイ” という表現がでてきました。実は、製品の作られた時期によって、Buffalo のドキュメント上のいわゆる “EM モード” の表記そのものが以下のように変遷しています:
- EM モード
- エマージェンシーモード
- スタンバイモード
これらはすべて同一のものを指し示しています。NAS Navigator2 と、ドキュメントと、LinkStation のファームウェアが作られた時期や担当するセクションの違いでこれらの表記が混在しているようです。
以下、本稿では簡素化のためにこれらに対する記述を “EM モード” で統一します。
上記の記述によると、EM モードというのはファームウェアが破損すると生じる状態のようです。
EMモードになったらどうすべきなのか
先ほどのBuffalo の記事には、続けて以下のように書かれています:
“エマージェンシーモード”の状態は、製品のファームウェアアップデートにより復旧する場合があります。
適切なファームウェアをダウンロードし、ファームウェアのアップデートを行ってください。
ドライバーファームウェアのダウンロードはこちらをクリックしてください。
製品のファームウェアのアップデータに失敗する場合は当社修理センターに修理をご依頼ください。
先ほど、EM モードというのはファームウェアが破損すると生じる状態であるということを確認しました。この時にファームウェアアップデートを実行すると何が起こるでしょうか。
LinkStationのファームウェアアップデートは大まかに以下のような工程で構成されています:
- LinkStation に内蔵されたHDDがフォーマット済みであることを確認する
- フォーマットされていなければユーザーにフォーマット実行の確認をする
- ユーザーが許可した場合、フォーマットを実行する(許可しなければ終了する)
- PC からLinkStation にファームウェアを少数のファイルにまとめたものを転送する
- それをLinkStation が検出する
- LinkStation が自身のシステム領域に展開する
- 再起動する
この操作の結果、運が良ければ、LinkStation 内の破損したファームウェアが、PCから転送された正常なファームウェアで上書きされて、正常な状態に戻ります。
運が悪いとファームウェアアップデートで何が起こるのか
では、運が悪いとなにが起こるのでしょうか。
NAS-RESCUE の業務上で観測されたのは以下の3通りです:
- 何回やってもファームウェアアップデートが正常終了しない
- フォーマット実行の確認メッセージが出てしまう
- 完了後にディスクチェックが走って止まらない
まず、何回やってもファームウェアアップデートが正常終了しない場合があります。
製品のファームウェアのアップデータに失敗する場合は当社修理センターに修理をご依頼ください。
と書いてある通り、そういうことはままあります。加えて、ファームウェアアップデートはLinkStation 内のファイルを書き換える操作が発生するため、健常な LinkStation の場合ならばいざ知らず、障害が発生した LinkStation ではあまり何度もやるべきではありません。最悪の場合、データ領域を損傷してしまうことも考えられます。試行回数はせいぜい数回に収めるべきでしょう。
次に、フォーマット実行の確認メッセージが出てしまう場合があります。障害が発生しているLinkStation ですから、内部のHDDの状態を正常に取得できない場合があります。もしくは、ファームウェア以外のどこかも破損していて、正常にフォーマットされているといえる状態ではなくなっている場合もあります。
この場合は必ず「いいえ」を押して、作業を中断して下さい。間違って「はい」を押してしまうと、データが永久に失われてしまいます。
最後に、完了後にディスクチェックが走って止まらない場合があります。上記と同じように、ファームウェア以外のどこかも破損していて、ディスクチェックが正しく実行できない状態になっているかもしれません。そうなると、ディスクチェックが走ったまま止まらなくなります。
ディスクチェックが走って止まりそうにないときは、即座に電源を切ってください。おそらく正規の手順で電源を切ることはできないので、ACアダプターのコネクターを引き抜くことになります。一度この状態になってしまうと、何日待ってもディスクチェックが終わることはありません。また、さらに悪いことに、この間、LinkStation 内のデータは破壊の脅威に晒され続けることになります。
ディスクチェックが走って止まりそうにないのか、正常に進行しているのかは判断が難しいため、このケースは少々厄介です。
LinkStation 内のデータが消えても問題がなければ、これらのリスクを抱えてでも実行して損はないのですが、そうでなければこのようなリスクは回避したいものです。
リスクを避けるにはどうするべきか
上記では、LinkStation がEMモードになった時にファームウェアアップデートを試した場合のリスクについて説明しました。では、これらのリスクを回避する方法はないのでしょうか。
考えられるのは以下の2つです:
- すべてのHDDのクローンを作成してからファームウェアアップデートを試す
- 1 CD Linux などのほかの方法でデータを救出する
まず、LinkStationに内蔵されたすべてのHDD のクローンを作成してから、それらに対してファームウェアアップデートを試す方法があります。この方法であれば、ファームウェアアップデートを実行した結果、何か問題が発生しても、オリジナルのHDD は問題が及びません。
クローンHDDの作成には EaseUS Disk Copy が便利です。クローン用のHDDは LinkStation が割とアバウトにできているため、同容量以上のHDDであれば、どのメーカーのどのHDDでも大丈夫です。
この方法のデメリットは以下の2点です:
- クローンHDD とSATA->USB 変換アダプターなどを必要に応じて新規購入しなければならない
- クローンHDD を作成するのにそれなりに時間がかかる
次に、1 CD Linux などのほかの方法でデータを救出してから、必要に応じてLinkStation を修理する方法があります。HDD を 1台のみ内蔵するLinkStation であれば症状が深刻でなければ以下の手順で簡単にデータが救出できます:
- LinkStation から HDD を取り出す
- KNOPPIX や Ubuntu などの Live CD / DVD からLinux を起動する
- SATA->USB 変換アダプター経由で LinkStation から取り出したHDDを接続する
- HDD の中身が表示されるので、それらをほかのHDDにコピーする
HDDを複数台内蔵する LinkStation の場合にはHDDを接続後に RAID を構成しなければならないのでそう簡単にはいきませんが大抵の場合は、LinkStationデータ取り出しHDD2台用 や、TeraStation専用 データ救出ツール NAS-RESCUE HDD4台用 を使用すれば比較的安くデータを救出できます。
まとめ
EM モードというのはLinkStation のファームウェアが破損すると生じる状態だということがわかりました。
EM モード になった場合は、製品のファームウェアアップデートにより復旧する場合があります。
しかし、その方法にはデータが失われてしまうようないくつかのリスクがあります。
それらのリスクを避けるためにはファームウェアアップデートを実行する前に以下のいずれかの処置を行う必要があることがわかりました:
- クローンHDDを作成する
- データを別の方法で救出しておく
大切なデータが失われることなく、LinkStation がEM モード から脱出できることを願っています。
自力データ復旧は以下の方にお勧めです:
- 5万円以下でデータを復旧したい
- 第三者にデータを見られたくない
TeraStation専用データ復旧ソフト「NAS-RESCUE」、HDDクローン作成ソフト「CloneMeister」を利用する事で、安心のサポート付きで安くデータ復旧できます。